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平成23年行コ)第287号 国籍確認等請求控訴事件
控訴人 [控訴人の項以下省略]
被控訴人 国

準備書面(1)

平成24年1月18日

東京高等裁判所第5民事部Xイ係 御中

被控訴人指定代理人
宇波なほ美
前畑 聡子
石井 博之
上坪 健治

第1 被控訴人の主張の概要

被控訴人の事実上及び法律上の主張は,原審口頭弁論において主張したとおりであり,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は正当である。

控訴人は,2011年10月24日付け控訴理由書(以下「控訴理由書」という。)において,控訴の理由をるる主張するが,控訴人の主張はいずれも原審での主張の繰り返しかあるいは独自の見解にすぎないものであって,本件控訴には理由がない。

念のため,以下において,控訴人の主張に対し,必要と認める範囲で反論する。

なお,略称等は,本書面で新たに用いるもののほか,原判決(原判決に略称等がないものは原審被告答弁書)の例による。

第2 控訴人の主張

1 控訴人の日本国籍確認請求について

控訴人は,本件において,現在も控訴人が日本国籍を有していることの確認を求めている(以下「本件国籍確認請求」という。)ところ,控訴審第1回口頭弁論期日における控訴人の発言(控訴人は,同期日において,控訴人が主張する憲法違反は「条約が憲法に違反して無効である」という趣旨でよろしいか,との質問に対し,「平和条約の解釈自体が違憲無効である」という主張である旨回答した。)によれば,その請求原因としては,従前からの本件処分が違憲無効であるという点に加えて,平和条約の解釈自体が違憲無効であるという点を主張しているものと解されるので,これを前提として反論する。

2 国家賠償請求について

控訴人は,本件において,国家賠償請求をしているところ,控訴審第1回口頭弁論期日における控訴人の発言によれば,本件通達の発出行為を公務員の加害行為とする従前の主張に加え,平和条約の締結行為が公務員の加害行為に当たるとの主張をしているものと解される。

第3 被控訴人の反論

1 本件国籍確認請求における請求原因の主張が失当であること

(1) 本件処分が違憲無効であるという請求原因について

本件処分が違憲無効であるとの控訴人の主張は,控訴人の日本国籍喪失の効果が,本件通達に係る本件処分によってなされたことを前提とする。

しかし,被控訴人が原審において主張し,また,原判決が正当に判示したとおり,朝鮮人の日本国籍の喪失は,平和条約の発効により生じたもので,本件通達は,平和条約の発効により,朝鮮に属すべき者が日本国籍を喪失することを前提として,これに伴う国籍及び戸籍事務の取扱いを示したものにすぎない(原審被告答弁書9ページ,原判決16及び17ページ参照)。

したがって,控訴人のかかる請求原因の主張はそもそも失当である。

(2) 平和条約の解釈自体が違憲無効であるという請求原因について

前記のとおり,控訴人は,本件国籍確認請求の請求原因として「平和条約の解釈自体が違憲無効であること」を主張するところ,そもそも,「平和条約の解釈自体が違憲無効である」とは,どのような事象を示すのか不明であるから,その点において控訴人の主張は失当である。

なお,控訴人が主張するところの「解釈」の意義も不明であるが,控訴人のいう「解釈」とは,本件通達に係る本件処分や,昭和36年最高裁判決によって示された判断を指すものとも考えられる。

しかしながら,控訴人のいう「解釈」が本件通達に係る本件処分を指すものであるとすれば,「平和条約の解釈自体が違憲無効である」との控訴人の主張は,控訴人の日本国籍喪失の効果が本件通達に係る本件処分によってなされたことを前提に,本件通達に係る本件処分の違憲無効をいう主張と同趣旨であり,かかる主張が失当であることは,前記(1)において述べたとおりである。

また,控訴人のいう「解釈」が昭和36年最高裁判決によって示された判断を指すものであるとしても,控訴人の国籍の変動は,前記(1)で述べたとおり,飽くまで平和条約の発効自体によって当然に生じたものであり,平和条約の解釈という後発的な行為によって生じたものではないことは明白である。よって,控訴人が,昭和36年最高裁判決によって日本国籍を喪失したことを前提として,本件国籍確認請求において,昭和36年最高裁判決が違憲無効な解釈であることを請求原因として主張するのであれば,かかる主張も,その前提において失当である。

以上から,平和条約の解釈自体が違憲無効であることを請求原因とする控訴人の主張は,その前提において失当である。

2 国家賠償請求に係る控訴人の主張に理由がないこと

(1) 本件通達の発出行為を加害行為とする主張に理由がないこと

前記1で述べたとおり,控訴人が日本国籍を喪失したのは,本件通達によるものではないから,本件通達の発出行為が国賠法上の違法と評価されることはあり得ない(原審被告答弁書15ページ)。

したがって,本件通達の発出行為を公務員の加害行為とする控訴人の主張は,理由がない。

(2) 平和条約の締結行為を加害行為とする主張に理由がないこと

国賠法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって「違法に」他人に損害を加えたときは,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずると規定するところ,同項にいう違法性とは,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反することであると解されている(職務行為基準説。最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512ページ,最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087ページ参照)。

そして,公務員が当該個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反し,国賠法上の違法が認められるためには,当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である(最高裁平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863ページ,最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決・判例時報1675号48ページ参照)。

控訴人は,平和条約の締結行為が国賠法にいう公務員の加害行為であると抽象的に主張するのみで,条約締結に関わった公務員において,いかなる職務上の法的義務に違反したものであるのか,また,どのように職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と条約締結をしたものであるのか,その主張からは明らかではなく,控訴人の主張は具体性を欠くもので失当である。

また,その点をおいても,当該条約締結に関わった公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があるとはおよそ認められない。

したがって,平和条約の締結行為を公務員の加害行為とする控訴人の主張は理由がない。

第4 結語

以上のとおり,控訴人の主張はいずれも原審での主張の繰り返しか,あるいは独自の見解にすぎないものであり理由がない。

したがって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決に誤りはなく,本件控訴は理由がないから速やかに棄却されるべきである。

以上


原典について


Copyright(C) 2012 日本国籍のなしくずし剥奪を許さない会
公開日:2012年1月20日、最終更新日:2012年10月20日
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