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この裁判は、在日韓国朝鮮人二世である原告キム・ミョンガン(金明觀)さんが、1950年の出生時には日本人(日本国籍をもつ者)として出生したにもかかわらず、サンフランシスコ講和条約の発効に伴って日本が朝鮮半島に対する一切の主権を放棄したことにともない、日本在住であったにもかかわらず日本国籍を剥奪されたのは憲法10条・13条・14条違反であるとして国に対して日本国籍を有することの確認を求めるとともに慰謝料として550万円の支払いを求めるものです。
1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約(以下「サ条約」といいいます)の発効に伴い、原告を含めた日本在住の朝鮮・台湾人らは日本国籍を剥奪される扱いを受けましたが、この処分については、昭和36年4月5日の最高裁大法廷判決により、国籍について法律で定めることを要求する憲法10条に違反しないとする判例が確立しています。
しかしながら、この判例は、その事案が血統的には純粋な日本人について、朝鮮人と婚姻したことにより朝鮮戸籍に入ったことを根拠として朝鮮人であるとし、国籍剥奪を追認したものであり、具体的妥当性の面からも以前から批判が強いものでした。
今回の裁判は、血統的には朝鮮人ではあるが出生時から日本国籍を取得した原告が、日本が第二次世界大戦の敗戦に伴い朝鮮の独立を認めるため朝鮮半島に対する主権を放棄したことにより、日本国籍を剥奪されるといった措置に対し、サ条約にそのような規定がないことから国民たる要件は法律で定めるとした憲法10条に違反すること、個人の意思に反して国籍を剥奪したことから個人の幸福追求権を保障した憲法13条に違反すること、国籍の剥奪に当たって出身による差別をしたとして差別を禁じた憲法14条に違反することを主張し、戦後65年を経て、日韓併合100年を経た今年(2010年)、サ条約の締結日(9月8日)を期して昭和36年最高裁大法廷判決の大胆な見直しを迫るものです。
日本に居住するいわゆる在日朝鮮人・台湾人は、戦後も引き続き日本国籍を有するとして民族教育を否定される一方、サ条約以後は突如として日本国籍を剥奪されて無国籍状態に置かれ、あらゆる権利を否定されてきましたが、これはサ条約の解釈の名の下に日本政府が国籍剥奪を強行したことが根本であります。
同様のことはサハリン在住の朝鮮人についても同様であり、サハリンに在住していた日本人は日本政府の助力により戦後帰国することができましたが、朝鮮人らは日本国籍を有しないことを根拠に日本政府は帰国のための助力を放棄し、とりのこされることになりました。
また、朝鮮人や台湾人男性と婚姻した日本人女性らも、外国人(日本国籍をもたない者)と婚姻したことすらないにもかかわらず突然自らの国籍を剥奪され、無権利状態に置かれてきた意味で、これは日本政府による積極的棄民であり、現行日本国憲法下において絶対あってはならない重大な人権侵害です。
こうした過去の日本政府及び最高裁判所の誤りは、今日にあっても犠牲者らを苦しめており、今日においてもこれを取り消す意義は消滅していません。