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(大項目10+小項目7)
この通達を発出した法務府民事局長は、戸籍事務を所管する一行政官であり、国籍の与奪や条約の解釈については何の権限ももたないことに留意されたい。
また、この通達は、法務局長および地方法務局長に対する職務命令であり、これをもって個人の重要な法的地位である国籍を変更できるというような性質のものではないことは明らかである。
詳細については、甲13号証「佐藤文明講演録」を参照されたい。
この通達と件名を同じくする、1952年5月22日付け法務府民事甲第715号法務府民事局長通達「平和条約に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について(通達)」(横浜地方法務局長移牒)を併せて参照されたい。
凡例:〔 〕内は、引用者註
昭和二十七年四月二十八日
横浜地方法務局長 三宅琢磨
管内支局長
市区町村長 御中
藤沢市 受附 昭和廿七年五月一日 第31号
〔藤沢市における供覧者職名及び押印省略〕
移牒
昭和二十七年四月十九日
法務府民事局長 村上朝一
法務局長
地方法務局長 御中
朝鮮及び台湾は、条約の発効の日から日本国の領土から分離することゝなるので、これに伴い、朝鮮人及び台湾人は、内地に在住している者を含めてすべて日本の国籍を喪失する。
もと朝鮮人又は台湾人であつた者でも、条約の発効前に内地人との婚姻、縁組等の身分行為により内地の戸籍に入籍すべき事由の生じたものは、内地人であつて、条約発効後も何らの手続を要することなく、引き続き日本の国籍を保有する。
もと内地人であつた者でも、条約の発効前に朝鮮人又は台湾人との婚姻、養子縁組等の身分行為により内地の戸籍から除籍せらるべき事由の生じたものは、朝鮮人又は台湾人であつて、条約発効とともに日本の国籍を喪失する。
なお、右の者については、その者が除かれた戸籍又は除籍に国籍喪失の記載をする必要はない。
条約発効後は、縁組、婚姻、離縁、離婚等の身分行為によつて直ちに内地人が内地戸籍から朝鮮若しくは台湾の戸籍に入り、又は朝鮮人及び台湾人が右の届出によつて直ちに同地の戸籍から内地戸籍に入ることができた従前の取扱(註1)は認められないこととなる。
条約発効後に、朝鮮人及び台湾人が日本の国籍を取得するには、一般の外国人と同様、もつぱら国籍法の規定による帰化の手続によることを要する。
なお、右帰化の場合、朝鮮人及び台湾人((三)において述べた元内地人を除く。)は、国籍法第五条第二号の「日本国民であつた者」及び第六条第四号の「日本の国籍を失つた者」に該当しない。
樺太及び千島も、条約発効とともに日本国の領土から分離されることとなるが、これらの地域に本籍を有する者は条約の発効によつて日本の国籍を喪失しないことは勿論である。
たゞこれらの者は、条約発効後は同地域が日本国の領土外となる結果本籍を有しない者となるので戸籍法による就籍の手続をする必要がある。
標記の諸島の地域に本籍を有する者は、条約の発効後も日本国籍を喪失するものでないことはもとより、同地域に引き続き本籍を有することができる。
右諸島のうち、沖縄その他北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の戸籍事務は、条約発効後も従前通り福岡法務局の支局である沖縄奄美大島関係戸籍事務所で取り扱われ、また、小笠原諸島、硫黄列島及び南鳥島に本籍を有する者の戸籍事務については、条約発効の日から東京法務局の出張所として小笠原関係戸籍事務所が設置され、同事務所において取り扱われることゝなる(本月十四日附民事甲第四一六号本官通達参照。)。
共通法(1918年法律第39号)第3条第1項の「一ノ地域ノ法令ニ依リ其ノ地域ノ家ニ入ル者ハ他ノ地域ノ家ヲ去ル」という取り扱いのこと。なお、共通法自体は現在も廃止されていない。
この文書は、藤沢市が保有する次の資料を原典として、htmlファイルに再構成したものです。
掲載にあたり、旧字体は新字体に置き換え、仮名遣いはそのままにしました。
原典は、横浜地方法務局長が1952年4月28日付け日記戸通達第15号で管内の支局長・市区町村長あてに移牒(管轄の異なる他の官庁へ文書で命令・通知すること)した、1952年4月19日付け法務府民事甲第438号法務府民事局長通達「平和条約に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について(通達)」を、藤沢市が1952年5月1日に収受したものです。
この通達の表題を「平和条約の発効に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について」などとする誤表記は、本裁判の原告訴状や被告乙第1号証をはじめ、以下の資料に散見されます。