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訴状

2010年9月8日

東京地方裁判所民事部 御中

原告訴訟代理人弁護士 張 學鍊

〒180−0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2丁目4番17−1401号
エストグランディール吉祥寺本町
原告 金 明觀[原告の項以下省略]

〒160−0002 東京都新宿区新宿一丁目26番9号 ビリーヴ新宿3階
AITS新宿法律事務所(送達場所)
原告訴訟代理人弁護士 張 學錬
電話  03−5362−0907
FAX 03−5362−0908

〒100−8997 東京都千代田区霞が関1−1−1
被告      国
代表者法務大臣 千葉 景子

国籍確認等請求事件
訴訟物の価額   710万円
貼用印紙額  40,000円

請求の趣旨

1 原告が日本国籍を有することを確認する。

2 被告は、原告に対し金550万円及びこれに対する本訴状到達の日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

請求の原因

第1 緒言

1 原告の属性

原告は、1950年に日本において当時日本国籍を有していた両親の間に出生し、出生により日本国籍を取得したものであるが、後述する経緯で第二次世界大戦の戦後処理の過程で締結された日本国との講和条約(いわゆるサンフランシスコ講和条約)の発効に伴い日本政府から何らの法的根拠もなく一方的に国籍剥奪の扱いを受け、その後大韓民国国籍を有する外国人として出生後一貫して日本に居住することを余儀なくされているものである。(甲1

2 本訴訟の意義

本訴訟は、上記の経過で国籍国である日本の政府から何らの根拠もなく一方的に日本国籍を剥奪する取扱を受けてきた原告について、今日においても日本国籍を有することを確認することを求めるものであるが、同時に、後述する理由でこれを合憲であると判断した判例である昭和36年の最高裁判決の誤りを正すものである。

第2 原告が日本国籍を喪失したこととされた経緯

1 出生による国籍取得

原告は、現在登載されている韓国の戸籍によれば1950年11月27日に兵庫県神戸市で父を金晶、母を姜息粉として出生した(甲1)。

原告の両親は、当時日本において「朝鮮人」と呼ばれた朝鮮半島出身者(いわゆる在日一世)であるが、原告が出生した1950年は、朝鮮半島に大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国とが1948年に相次いで建国された後であり、両国が朝鮮戦争を戦っている最中だった。

しかし、1950年当時日本に居住していたいわゆる「朝鮮人」については、日本政府の公式の立場は、日本国籍者ということであった。

原告の両親が1950年当時婚姻していたかについては、戸籍の記載上も当事者の記憶上も明確ではないが、婚姻していたにせよ、内縁であったにせよ、当時の日本では同年5月4日に制定され、同年7月1日から施行されていた国籍法(以下、新国籍法という)があり、これによると出生当時両親が日本国籍である原告は、日本国籍を取得していたことになる。

すなわち、新国籍法では、出生による国籍取得については血統(父系)主義を採用し、出生の時に父が日本国民であるとき(同法2条1号)、あるいは父が知れない場合母が日本国民であるとき(同条3号)、いずれの場合でもその子は日本国民とすることになっていたから、原告の両親が原告出生時において婚姻していたかどうかにかかわらず、原告が出生により日本国籍を取得したものである。

2 サンフランシスコ講和条約締結と昭和27年4月19日法務府民事局長通達

ところが、日本は、第二次世界大戦の戦後処理の過程で、アメリカ合衆国はじめとする、いわゆる連合国との間で1951年9月8日に日本国との平和条約(いわゆるサンフランシスコ講和条約。以下サ条約という)を締結し、この条約は1952年4月28日に発効した。そして、これに伴い同年4月19日付で法務府民事局長が「平和条約発効に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について」(昭和27年4月19日民事甲第438号法務府民事局長通達)なる通達(以下、本件通達という)を発し、このなかで「朝鮮及び台湾は、条約の発効の日から日本国の領土から分離することとなるので、これに伴い、朝鮮人及び台湾人は、内地に在住しているものを含め全て日本の国籍を喪失する。」とされたのである。

これによって、原告は事実上日本国籍を剥奪される扱い(以下、本件処分という)を受けることとなり、今日に至っている。

第3 原告が日本国籍を有する根拠

1 平和条約の規定

一介の行政官に過ぎない法務府の民事局長が、およそ日本国民から国籍を剥奪する権限がないことは法体系上明らかであるから、本件通達が依拠している平和条約が原告から日本国籍を剥奪する規定をしているかどうかが本件処分の効力を論じる上で問題となる。

この点、本件通達が言及しているのは、サ条約第2条(a)項であるが、ここには「日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄する。」と規定されているのみであり、この条項が「領域」と題された第二章の冒頭の条項であり、他の項でも全て領域をどうするかについて規定されているに過ぎないことに鑑みれば、同項が個人の国籍について何らの定めもしていないことは一見して明らかである。

したがって、常識的にも法論理的にもに考えて[常識的にも法論理的にも]、原告が出生によって取得した日本国籍を喪失する根拠は存在しない。

2 最高裁昭和36年4月5日大法廷判決とその批判

しかしながら、この条項の規定については、最高裁判所昭和36年4月5日の大法廷判決が、大要次のように判断して本件通達の「解釈」を支持したことはあまりにも有名である。

すなわち、サ条約の第2条(a)項は、領土主権のみならず対人主権の放棄を含み、日本は朝鮮に属すべき人に対する主権を放棄した。対人主権の放棄は、朝鮮に属すべき人の日本国籍を喪失させることを意味するところ、朝鮮に属すべき人というのは、日本と朝鮮との併合後において、日本の国内法上で朝鮮人としての法的地位をもった人と解するのが相当である。朝鮮人としての法的地位を持った人というのは、朝鮮戸籍令の適用を受け、朝鮮戸籍に登載された人である。したがって、サ条約発効当時に朝鮮戸籍に登載されていた人は、全て朝鮮に属すべき人として日本国籍を喪失するというのが最高裁の論理である。

この判決は、原審の結論を支持するに際し、上告人代理人から主張された憲法10条11条12条13条違反の点について、これらに違反しないと判示しているが、憲法10条違反以外の点についてはほとんど記述がなく、実質的には憲法10条違反の点についてのみ検討したものといってよい。

そして、憲法10条に違反しないと判断した論理としては、憲法には国籍法上領土の変更に伴う国籍変更の規定がないことと[憲法10条が日本国籍の要件を法律で定めることを規定しているところ、これを定めた国籍法は、領土の変更に伴う国籍の変更について規定していないことと]領土の変更に伴って国籍の変更を生ずることを前提として、この変更に関して国籍法上の[国際法上の]確定原則がなく、条約によって定められるのが通例であることをふまえ、憲法10条は法律の規定がなくても領土の変更に伴う国籍の変更について条約で定めることを認めた趣旨ゆえ、条約によって国籍剥奪を定めても憲法10条違反とはならないとするのである。

(1) 憲法10条違反

しかしながら、憲法10条違反の点に関する上記昭和36年最高裁判決は、明らかに次のような致命的な論理的飛躍をおかしているというほかない。

すなわち、同判決は、サ条約第2条(a)項の規定が対人主権の放棄をしたものであると前提しているが、なるほど領土の変更に伴い国籍の変動が生じることは通常であるものの、後述するように日本における領土変更の際のそれまでの取扱に照らしてもそのように解する必要性・必然性は全くないし、そもそもサ条約の締結過程における議論においても対人主権の放棄については全く議論されていなかった(大沼保昭著「在日韓国・朝鮮人の国籍と人権」238頁)。

したがって、サ条約第2条(a)項は、やはり領土に関する変更のみ規定したにとどまり、対人主権の放棄する趣旨を含むものと解することは全くできないのである。

そうであれば、本件処分は、通達による日本国籍剥奪ということにほかならず、国籍の変動について法律によるべきであることを定めた憲法10条に明らかに違反している無効な処分といわざるを得ない。

(2) 戸籍を基準とする論理の矛盾

また、昭和36年最高裁判決は、上記のようにサ条約における対人主権の放棄を前提として、その処分の適用範囲を朝鮮に属すべき人であるとし、朝鮮に属すべき人というのは朝鮮戸籍に登載されたものであるとしているが、まさしくこの判決の事例がそうであるように、この論理は、事柄の妥当性をも全く無視したでたらめなものであった。

すなわち、当時日本と朝鮮とでは、異なる法律が適用されており、戸籍についても日本と朝鮮においては別々の戸籍(内地戸籍と朝鮮戸籍)が編製されており、日韓併合時に大韓帝国民であった者については、朝鮮戸籍令に基づいて朝鮮戸籍に登載され、転籍による相互の移動は原則禁じられていた。

しかし、婚姻・入養[註1]などの身分行為が生じた場合には当時の共通法により戸籍の移動が例外的に認められ、たとえば内地戸籍に登載された女性が朝鮮戸籍に登載された男性と婚姻した場合には、女性が朝鮮戸籍に登載されることになっていたのである。

昭和36年最高裁判決の事案はこのような事案であり、血統的には純粋に内地人である女性が、朝鮮人との婚姻により朝鮮戸籍に登載されているという事実のみをもって、日本に居住しているにもかかわらずサ条約の規定上当然に日本国籍を喪失すると判断したのである。

考えてみれば、この事案の女性にとって、血統的には生粋の内地人であり、その女性がただ当時朝鮮戸籍に登載されていた日本国籍の男性と婚姻したという一事をもって、日本が朝鮮に対する主権を放棄するという条項を根拠に日本国籍を剥奪されるということは、後述する憲法論を別としても到底妥当とはいいがたいし、それが解釈としてもっとも妥当なものだとする根拠を見いだすことは困難である。

まして、この女性は、当時既に朝鮮人男性との婚姻が破綻し、別居して日本に居住していたのであり、サ条約発効時に朝鮮半島に居住し、永住する立場のものであったのなら格別、このような境遇の女性に対して国民としての資格を剥奪することが妥当な解釈だとする神経は全く理解できない。

(3) 日華基本条約に[日華平和条約に]おける処理との不整合

昭和36年最高裁判決の論理的破綻は、同様にサ条約によって日本が放棄した台湾出身者の国籍処理において決定的に明らかとなっている。

すなわち、最高裁判所昭和37年12月5日大法廷判決は、上記昭和36年大法廷判決の事案と類似した事案(昭和22年に台湾人(当時日本国籍である)と婚姻した内地人女性の国籍が問題となった)において、この女性が(現実には台湾戸籍に登載されていなくても)婚姻により内地戸籍から除かれるべき事由の生じた者として、日本と中華民国との間の平和条約(以下、日華平和条約)により台湾が中華民国に譲渡されたことに伴い、同条約の発効とともに日本の国籍を喪失したと判断したのである。

しかしながら、台湾については、サ条約第2条(b)項によって日本は朝鮮と全く同様の処理をしており、朝鮮に対して上記のような解釈をした以上、サ条約より後に締結発効(1952年4月28日署名、同年8月5日発効)した日華平和条約により台湾人が日本国籍を喪失するという解釈をとることは論理的に全く無理であるといわざるを得ない。実際、本件通達は、サ条約の発効によって台湾人が日本の国籍を喪失するとしているのである。

逆に、もし日華平和条約により台湾人が日本国籍を喪失したとするのであれば、朝鮮人の場合も、大韓民国か朝鮮民主主義人民共和国との間で締結される条約において国籍の移動がされることになったはずであるが、1965年6月22日に署名された日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(いわゆる日韓基本条約)においても、全く記載されなかった。

したがって、昭和36年最高裁判決と昭和37年最高裁判決との間には決定的な不整合があることになるが、最高裁は今日までこの不整合については全く放置しているのである。

(4) 北方領土問題における処理との矛盾

同様の不整合は、北方領土についても同様であり、サ条約第2条(c)項において日本は千島列島ならびにポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部等に対する主権を放棄しているが、この領土の変更については何らの国籍変更の処理も行われておらず、サ条約発効時にこの領域に居住していた旧樺太原住民の日本国籍を剥奪したという処理はされていないし、家庭裁判所の審判においてもそれを前提とした審判がなされており、昭和36年最高裁判決と全く矛盾した態度をとっている(旭川家裁昭和41年3月30日審判家月18巻10号72頁、釧路家裁網走支部昭和43年12月24日審判家月21巻6号74頁)。

(5) 過去の日本が関与する領土変更を伴う条約における先例との不整合

このように、昭和36年最高裁判決は、同じサ条約第2条各号の間で矛盾を来す状況になっているが、そればかりでなく、同判決の大前提となった領土の変更には国籍変更が当然に伴うという論理についても、これまでの日本の実例とさえ整合していない。

すなわち、日本は、1875年5月7日にロシアとの間でいわゆる樺太・千島交換条約を締結しているが、その際この条約の中で住民の国籍問題に触れ、住民が従来の国籍を保有しうることを定めているし、原住民については、その後締結された同条約の附録条款のなかで領土の変更が住民の国籍に影響を及ぼすことを認め、国籍選択権を与えている。

また、日清戦争の戦後処理として1895年4月17日に締結されたいわゆる下関条約においては、遼東半島・台湾・澎湖諸島の日本への割譲に伴う住民の国籍得喪について、第5条で規定し、当該地域の住民が2年以内に不動産を処分して退去しない場合、退去しない住民を日本国民とみなすとの規定がおかれている。

このような先例に徴すれば、次の二つの重要な命題が導かれる。

それはすなわち、①領土の変更に伴い国籍の変動が当然に生じるわけではなく、国籍の変動が生じる場合でも当該住民に国籍の選択を与える余地があること、②国籍の変動を伴う場合には条約に明文がおかれること、である。

昭和36年最高裁判決は、この2つの命題を全く無視しており、明文の規定がなくても領土の変更に伴い当然に国籍が変動すると解し、解釈によってその変更範囲を一律に決して国籍選択の余地すら認めなかったということになるのである。

それと、もう一つ過去の先例との決定的な違いは、サ条約は、領土の変更を伴うといっても、二国間の領土のやりとりという形をとったものではなく(植民地が独立する場合を含む)、独立すべき朝鮮に新たに成立する国家(サ条約締結時には既に南部に大韓民国、北部に朝鮮民主主義人民共和国が建国されていた)を当事国としない条約であったということである。そうであるがために、原告らの日本国籍が剥奪されると同時に韓国国籍あるいは朝鮮国籍が付与されることはなく、植民地出身者及びその子孫(この中には、外地戸籍に入ることになった血統的には純粋な日本人を含むが、逆に身分行為により外地戸籍から除かれ内地戸籍に入ったことになったものは除かれる)については、全くの無国籍状態におかれたということである。このことの問題性も今更強調しなくても自明であろうが、日本国籍を剥奪され無国籍とされたものは、突然外国人として外国人登録することを余儀なくされ、あまつさえ退去強制の対象とさえされたのである。

このような判断が到底世間の評価に堪えるものではないこと、まして一国の法律解釈適用について最高の権威を保有する最高裁判所の大法廷の判決としてお世辞にも評価する余地がないこと、多言を要しないであろう。

(6) 憲法13条違反

上記のように、昭和36年最高裁判決は、それ自体が矛盾に満ちたものであり、一片の説得性も有しないものであるが、それ以外にも、同判決が見落とした以下の憲法上の問題点があり、やはり原告に対する日本国籍剥奪の処分は無効といわざるを得ない。

すなわち、本件で問題になっている日本国籍の喪失という処理は、個人から国籍をその意に反して剥奪するという処分であり、他の領土の変更があった場合の実例のようにそれと引き替えに別の国籍の保有することを保障したものでさえないから、純粋に国家による国籍の剥奪処分であるというほかない。

国籍は、特に個人がその国籍国に居住している場合、その保有は居住・就労・財産保有・公務就任・公民権行使その他あらゆる場面で極めて重要な役割を果たす基本的地位であり、個人が国籍を保有する権利、換言すれば恣意的に国籍を奪われない権利は、憲法13条の保障が及ぶことについて異論はないと思われる。

したがって、本件処分は、個人の尊重・幸福追求権を保障した憲法13条に違反する違憲の処分であり、無効である。

(7) 憲法14条違反

また、本件処分は、日本人のうち朝鮮戸籍に登載されている者を対象として一律になされたものであるわけであるが、この対象者の切り分けは上記のとおり基本的に合理性がないだけでなく、次のような問題を包蔵している。

すなわち、本件処分は、朝鮮戸籍への登載の有無に着目してなされているが、これは、本人自身(あるいはその親)の出身地ないし帰属する民族に着目した処分であるということができる。

したがって、形式的に人種や社会的身分又は門地による差別を禁じた憲法14条に違反するかどうかが当然問題となる。

そこで、出身地あるいは帰属する民族に着目した本件処分に合理性があるかが次に問題となるわけであるが(この点は、昭和36年最高裁判決では判断されていない)、本件処分が朝鮮出身者あるいは朝鮮民族に属する者に対して国籍選択権を与えた者であるならば[ものであるならば]、それ以外の者とは別に選択権を与えたとしても、その区別した取扱に合理性を認めることが可能である。

しかしながら、本件処分は、本人の意思を全く無視して国籍を剥奪したものであり、日本国籍剥奪の不利益は、特に日本に居住する場合に特に大きい。したがって、本件処分は、朝鮮出身者あるいは朝鮮民族以外の者との対比において、朝鮮出身者あるいは朝鮮民族の者に特別な不利益を与えるものでしかなく、同じ日本国籍者についてこの差別的取扱をすることは到底合理化できない。

たとえば日本の一部が将来いずれの国かに対して割譲された場合を想定した場合に、割譲対象の地域における居住の有無その他理由の如何を問わず、割譲された地域に本籍を置く、あるいは出身地がその地域である者から一律に日本国籍を剥奪するような処分をしたと想定した場合、(差別以外の別の観点の問題もあるが)誰でもそれは不条理な差別であると考えるであろう。本件処分はこれと全く同一の論理に立脚するものなのであって、これが不条理な差別だと考えない者はいないであろう。

よって、本件処分は、憲法14条に違反する無効な処分であって、原告は現時点において日本国籍を保有しているというべきである。

第4 慰謝料請求権の内容と結語

原告は、上記のとおり自らの意に反して出生によって取得した日本国籍を一方的に剥奪され、居住している日本において外国人として無権利状態に置かれるという境遇に長年甘んじざるを得なかった。

日本国籍の剥奪という行為は1952年4月28日になされたものと見ることができるが、国籍を恣意的に剥奪され、外国人として暮らさなければならないという状況は今日においても継続している。

したがって、被告は、58年強の長きに及ぶこの間の原告の被った精神的損害を慰謝する義務を負うが、この精神的損害を慰謝すべき金額としては500万円が相当であり、被告は、原告に対し、これに弁護士費用50万円を加えた550万円と民法所定の遅延利息を支払う義務を負う。

よって、原告は、被告に対し日本国籍を有することの確認を求めるとともに、上記の精神的損害を賠償すべき金員の支払を求めて本件提訴に及んだ。

以上

証拠方法

付属書類


引用者註

[註1]入養

養子に入ったり、養子に入れたりすること。養子縁組。

原典について


Copyright(C) 2011-2013 日本国籍のなしくずし剥奪を許さない会
公開日:2011年2月10日、最終更新日:2013年1月4日
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