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平成23年(行コ)第287号 国籍確認等請求控訴事件
控訴人 [控訴人の項以下省略]
被控訴人 国
2012年1月17日
東京高等裁判所5民事部Xイ係 御中
控訴人訴訟代理人 張 學鍊
被控訴人は、控訴人の主張について、平和条約の解釈が違憲無効であるというものとして取り扱っているが、確かに、控訴人においては平和条約2条(a)項自体が違憲無効であるとの立場は取っておらず、この条項に国籍変動の効果を読み取った解釈が憲法に反する誤ったものであると主張し、あわせてこの解釈に立脚した通達による国籍剥奪処分を無効であると主張していることは事実である。
しかしながら、あたかも「解釈」という行為に立法(条約締結)とは異なる独立の処分性を認め、その無効を主張しているかのように曲解されては話にならない。そもそも控訴理由書には、解釈が無効であるなどという下りは[件(くだり)は]ない。
したがって、被控訴人の主張は、ことさらに控訴人の主張を曲解・歪曲し、後記のように議論を回避しているといわなければならない。
上記のとおり、控訴人としては、条約そのものに国籍変動が規定されていないと考えているのであるから、条約の締結行為が加害行為になると主張するものではない。
被控訴人自身の反論自体趣旨不明であるので反論に苦慮するが、昭和36年最判の示した解釈は、もとより違憲確認の対象などではなく、それを求める実益がないのは上述したとおりである。
控訴人が主張しているのは、控訴理由書に記載したとおり、昭和36年最判の解釈(もとより、1952年の法務府民事局長通達の依拠した立場でもある)が、法の解釈一般原則、憲法諸条項、条約の直接適用可能性、その他日本の法システム上の当然のあり方、解釈内容の一般的合理性・妥当性に照らして誤りであるということである。
したがって、被控訴人が反論を求められているのは、上記最判の解釈が控訴人の指摘する論点について正当性・合理性があることの論証(主張・立証)であって、準備書面(1)のように、「条約の解釈という後発的な行為によって(国籍変動が)生じたものではない」などという詭弁を弄して露骨に議論・反論を回避する態度は、厳しく指弾されてしかるべきである。
逆にいえば、昭和36年最判の解釈は、上記の論点において全くその正当性・合理性を見いだすことができないものであると被控訴人たる政府が自認したに等しいということを指摘しておきたい。
既に述べたように、昭和36年最判の示した解釈は誤りであり、控訴人の主張する立場(平和条約2条(a)項は、国籍については何ら規定していない)に立てば、控訴人の国籍に変動が生じたのはもっぱら上記通達によるものであるから、本件通達の発出行為が国賠法上違法とされることに誤りはない。
いずれにせよ、被控訴人は平和条約の締結行為について云々している点で、全く的外れの反論である。
以上